現実の太宰治と中原中也の関係 初対面で絡む中也・乱闘の飲み会エピソード

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最近、文豪ストレイドッグスを読み始めました。

文豪マンガって作品を読むきっかけになるし、いいですよね!

文ストでは、中原中也が太宰治にちょっかいを出して、うまくあしらわれているような感じがします。
そこで、今回は実際の太宰治と中原中也の関係はどうだったのか、調べてエピソードをまとめてみました

この文章で紹介することはこちらです
  • 実際の太宰治と中原中也の出会い
  • その飲み会の乱闘エピソード
  • 現実の2人の関係

この記事は、主にこちらの本を特に参考にして書いています。

無頼派仲間の小説家、檀一雄の描いた太宰治との青春の回想録

昭和八(1933)年に太宰治と出会ったときに「天才」と直感し、それを宣言までしてしまった作家・檀一雄。天才・太宰を描きながら、同時に自らをも徹底的に描いた狂躁的青春の回想録。作家同士ならではの視線で、太宰治という天才作家の本質を赤裸々に描いた珠玉の一編である。(版元ドットコム 紹介より抜粋)
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太宰治と中原中也の出会い

太宰治と中原中也の出会いは檀一雄の随筆によると昭和9年(1934年)と言われています。
中原中也が詩人の草野心平と共に太宰治の友人の小説家・檀一雄のもとにやってきました。
宮沢賢治の全集が出るから買わないか、ということを伝えるためにです。

そこに太宰治がやって来たので、太宰・檀・中也・心平の四人で近所に呑みに行きました
これが実は最後は乱闘で終わる、実際の太宰治と中原中也の出会いです。

乱闘…???

現実でも太宰に絡んでいた中原中也

その飲み会のはじまりの様子について、檀一雄の文章から引用します。

いずれにせよ、「おかめ」という程近いおでん屋に打連れて出かけていって、かなり酔った。中原と太宰は初対面である。酒の暖で体がほぐれてゆくのと一緒に、例の通り中原中也は太宰治にひどくからんでいるようだった。太宰は閉口し、くしゃくしゃな泣き出しそうな顔だった。中原を、兎にも角にも先輩として尊敬していたからである。

檀一雄『光焔万丈長し』より(「太宰と安吾」 角川ソフィア文庫 から引用)

「例の通り」ともあるように、中原中也の酒癖の悪さは有名でした。
なかなか困る「絡み酒」タイプでした。

別の本ではここで太宰に向かって、「青鯖が空に浮んだような顔をしやがって」と言ったという記述もあります。

青鯖が空に浮かぶ図

鯖の大きめな瞳が、なんとなく固まって泣きそうな太宰の姿と重なったんでしょうか…

文豪ストレイドックスでも中原中也が太宰治に絡んでいますが、同じ様に現実でも中原中也は太宰治に絡んでいたようです。(というか飲むと誰にでも絡みます)

中原中也の絡みはさらに続きます。

ひどくからんで、さんざんにしぼり上げた末、中原は太宰に言った。「おめえ、何の花が好きだい?」
太宰はちょっと当惑してへどもどした。
「ええ、何だい? おめえの好きな花は?」
まるで断崖から飛び降りるような思いつめた表情で、しかし甘ったるい、今にも泣きだしそうな声で、とぎれとぎれに太宰は言った。
モ、モ、ノ、ハ、ナ

檀一雄『光焔万丈長し』より(「太宰と安吾」 角川ソフィア文庫 から引用)

太宰・檀・中也・心平の性格と体格

ここで一旦、この場の4人の性格や体格についてまとめてみたいと思います。

太宰治と檀一雄の体格・身長

まず、友人関係である太宰治と檀一雄についてです。
2人の体格ですが、檀一雄が、『太宰治・人と文学』という作品で「太宰の背丈は、私とほぼ寸分違いなかったから1メートル73,4。」とありました。なので太宰治も檀一雄も173~174cmぐらいです。

二人とも身長には恵まれていたと思うのですが、雰囲気には差がありました。
2人の師匠である佐藤春夫は、「檀は南国的で男性的で粗暴」「太宰は北国人で女性的で意識過剰」と言っています。

また、詩人・高橋新吉の「中原中也の思い出」という文章の中に、この頃の太宰治の雰囲気について書かれた文章があります。

或日、花園アパートへ行くと、中原の入口の土間に、腰かけている学生がいた。日蔭の草の茎のような、生白い、ヒヨワイ感じだったが、それが、太宰治であった

高橋新吉『中原中也の思い出』より(「群像 日本の作家15 中原中也」小学館)

ここから檀一雄は戦闘タイプですが、太宰治は戦闘タイプではない、ということがわかります。

中原中也の体格・身長

中原中也については坂口安吾の記述をご紹介します。

坂口安吾に、『二十七歳』という作品があります。
計算すると1933年頃を書いた作品になるので、この飲み屋での出来事の頃と割と近いです。
坂口安吾には酒場で仲良くなった女給がいたのですが、中原中也もこの女給に少し気がありました。
なので、中也は坂口安吾のことを良く思っていません。

ある日、坂口安吾が友達と飲んでいると、中原中也が「ヤイ、アンゴ」と叫んで、安吾にとびかかりました。

やっぱりな中原中也…。

ここからは坂口安吾の文章を引用します。

 とびかゝつたとはいふものの、実は二三メートル離れてをり、彼は髪ふりみだしてピストンの連続、ストレート、アッパーカット、スヰング、フック、息をきらして影に向つて乱闘してゐる。中也はたぶん本当に私と渡り合つてゐるつもりでゐたのだらう。私がゲラ/\笑ひだしたものだから、キョトンと手をたれて、不思議な目で私を見つめてゐる。こつちへ来て、一緒に飲まないか、とさそふと、キサマはエレイ奴だ、キサマはドイツのヘゲモニーだと、変なことを呟きながら割りこんできて、友達になつた。

坂口安吾『二十七歳』より引用 (青空文庫ではこちら

実際の中原中也は身長150cmくらい、坂口安吾は170cmぐらいです。
しかも安吾は中学生の時に全国中学校陸上競技会のハイジャンプで優勝しているように、スポーツが得意です。

これらの描写から、実際の中原中也はけんかっ早いですが、体格から考えて戦闘力としては弱いと思います。

文ストの中也は強いんだけどね…。ファイタースタイルなのはこういう描写が元になってるんだろうな。

詩人・草野心平の強さ

カエルの合唱

草野心平は、小学校の教科書に載っていた「春のうた」という詩が有名な詩人です。

ほっ まぶしいな。
ほっ うれしいな。

みずは つるつる。
かぜは そよそよ。
ケルルン クック。

草野心平『春のうた』より一部抜粋

ケルルン クック。

こういうほのぼのの詩を書きながら、実は草野心平は腕っぷしが強いです。
だいぶ後のことですが、1952年文京区に「火の車」という飲み屋を開き、そこでのいざこざやもめごとは自分が腕っぷしで仲介をしたそうです。

まとめるとこの飲み会では

戦闘力が高い檀一雄・草野心平
けんかっ早いけど強くはない中原中也
ヒヨワイ感じ太宰治

というメンバーだったことがわかります。

飲み会からの乱闘

4人の飲み会の場面に戻ります。
ここのエピソードは檀一雄の『小説 太宰治』を引用します。

「モ、モ、ノ、ハ、ナ」云い終わって、例の愛情、不信、含羞、拒絶何とも云えないような、くしゃくしゃな悲しいうす笑いを泛べながら、しばらくじっと、中原の顔をみつめていた。
「チェ、だからおめえは」と中原の声が、肝に顫うようだった。
そのあとの乱闘は、一体誰と誰が組み合ったのか、その発端のいきさつが、全くわからない
少なくとも私は、太宰の救援に立って、中原の抑制に努めただろう。気がついてみると、私は草野心平氏の蓬髪を握って掴み合っていた。それから、ドウと倒れた。
「おかめ」のガラス戸が、粉微塵に四散した事を覚えている。いつの間にか太宰の姿は見えなかった。

檀一雄『小説 太宰治』より

いきなり乱闘です。
檀一雄がこのメンバーの中で、中原中也よりも戦闘力の高い草野心平を抑えようとしているのが面白いです。

太宰はいなくなりました。というか別の随筆では、モモノハナと答えて中原中也にチェッと言われた後、「その悲しいうす笑いの表情のままぷいと立上がって、それから、矢のように逃げ帰っていって終った。みんな白けた。」というものもあります。
太宰にはこの環境が耐えられませんでした。奥様の津島美知子さんが書かれた「回想の太宰治」では、

若いとき喧嘩が始まったとみると逃げ出して、その逃げ足の早さに、「隼の銀」といわれたものだ

津島美知子『回想の太宰治』より

と自分を語る太宰治の姿があります。

奥様が執筆した太宰治本

濃やかな愛情と明晰な目がとらえた人間・太宰治ーー太宰治は、文字通り文学のために生まれ、文学のために育ち、文学のために生きた「文学の寵児」だった。彼から文学を取り除くと、そこには嬰児のようなおとなが途方に暮れて立ちつくす姿があった。戦中戦後の10年間、妻であった著者が、共に暮らした日々のさま、友人知人との交流、疎開した青森の思い出など、豊富なエピソードで綴る回想記。(版元ドットコム 紹介より抜粋)

檀一雄の記述は続きます。

私は「おかめ」から少し手前の路地の中で、大きな丸太を一本、手に持って、かまえていた。中原と心平氏が、やってきたなら、一撃の下に脳天を割る
その時の、自分の心の平衡の状態は、今どう考えても納得はゆかないが、しかし、その興奮状態だけははっきりと覚えている。不思議だ。あんな時期がある。

檀一雄『小説 太宰治』より
丸太にたたずむヒヨコ

太宰治と中原中也の初めての出会いは、このように乱闘で終わりました。
ちなみにこの時中原中也と草野心平は別の道に行ったようで、檀一雄の一撃は避けられました。良かった…。

このような始まりの為か、太宰治は中原中也のことをあまりよく思っていなかったようです

けれど、嫌い好きに関係なく文学者としてはやはり尊敬していたようです。
『小説 太宰治』の中には中原中也の死後に

「立原も、中原も死んじまったね」
「死んだ。死んで見ると、やっぱり中原だ、ねえ。段違いだ

檀一雄『小説 太宰治』より

と、檀一雄の言葉をきっかけに、中原中也を詩人として段違いだと賞賛する太宰治の姿があります。

まとめとその後のお話

太宰治は中原中也のことをその性格からか苦手としていました。
ただ、『小説 太宰治』によると詩人としては尊敬していたようです。
文豪ストレイドッグスの、太宰治が中原中也に対してうっとうしく思いながらも相手を認めている点はそういう点から来ているのかもしれません。

ちなみに!

ちなみに髪を掴むほどの喧嘩をした檀一雄と草野心平はその後めちゃくちゃ仲良くなり、お嬢さんで女優・エッセイストの檀ふみさんが「優しい飲んだくれの心平おじちゃん」と思うくらい、家族ぐるみのお付き合いになっています。

今回は現実の太宰治と中原中也の関係についてまとめました。

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