宮沢賢治『セロ弾きのゴーシュ』のあらすじをネタバレ有で最後までご紹介します。

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この記事では宮沢賢治の『セロ弾きのゴーシュ』について、基本情報・登場人物や冒頭文紹介をした後、あらすじをご紹介しています。
あらすじは「簡単なもの(184字)」とイメージ画像を多めにつけた「お話として読める要約」の2種になっています。どちらもネタバレ有になりますのでご注意ください。

逆に、「いろいろな事情があってあらすじをすぐ知りたい」という方のご参考になればと思っています!

原作はAmazonで無料で読めます。→『セロ弾きのゴーシュ』Kindle版(Amazonへのリンク)

あらすじではなく、『セロ弾きのゴーシュ』の解説や考察が読みたい場合は、こちらのリンクをご覧ください
宮沢賢治『セロ弾きのゴーシュ』解説・考察|猫になぜ謝らない?最後のセリフの理由

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基本情報

作者について

宮沢賢治

1896年8月27日 – 1933年9月21日(享年37歳) 岩手県花巻市出身
日本の詩人、童話作家。仏教(法華経)信仰と農民生活に根ざした創作を行った。彼の作品は生前ほとんど一般には知られず無名に近く、没後、草野心平らの尽力により作品群が広く知られ、世評が急速に高まり国民的作家となっていき、今でも日本には広く愛好者が存在する。
Wikipediaより抜粋

『セロ弾きのゴーシュ』情報

執筆年 1931年頃 (諸説あり)
発表年1934年(賢治が亡くなった後)
ページ数 23ページ
(AmazonのKindle青空文庫版による)

登場人物

  • ゴーシュ…主人公。セロ弾き。(「セロ」は楽器の「チェロ」のこと
  • 楽長・楽団員…ゴーシュの所属する「金星音楽団」のメンバー
  • 三毛猫・かっこう・狸の子・野ネズミの親子…夜にゴーシュを訪ねてきてさまざまなお願いをする

冒頭文

ゴーシュは町の活動写真館でセロを弾く係りでした。けれどもあんまり上手でないという評判でした。上手でないどころではなく実は仲間の楽手のなかではいちばん下手でしたから、いつでも楽長にいじめられるのでした。

簡単なあらすじ

まずは簡単なあらすじです。

チェロのシルエット

ゴーシュは町の映画館でセロを弾く係です。けれどもあまり上手ではありません。今度音楽会に楽団は出演する予定がありますが、その練習でも怒られ続けています。なのでゴーシュは夜中に一人、必死で練習しています。
そんなゴーシュの元にある晩から、猫・かっこう・狸の子・鼠の親子が次々と訪れました。ゴーシュは音楽を通じてさまざまな形で彼らと関わり、成長し、そして音楽会は成功しました。(184文字)

詳しいあらすじ

それでは次に、イメージ画像を挟みながら詳しいあらすじをご紹介します。


ゴーシュは町の活動写真館(映画館)でセロ(チェロ)を弾いています。
(この頃の映画は音がでなかったので、直接その場で演奏して音をつける楽団の人が映画館で働いていました。)

けれどゴーシュは楽団の中ではいちばん演奏が下手で、よく怒られていました。
今度、楽団が町の音楽会に出演することになりました。
楽長は、「音楽を専門にやっている我々が町の一般人に負けるわけにはいかない」と、気合が入っています。今日も練習です。

練習場

「おいゴーシュ君、困るよ」
ゴーシュがまた叱られました。音が遅れてる、糸が合っていなくて音が違っている、音に感情が出ていないなど、散々な言われようです。
ゴーシュは、楽譜を一心に見つめながら弾いているのですが、うまくいきません。
「わが金星音楽団がきみ一人のために悪評をとるようでは、みんなが気の毒だ。では今日の練習はここまで」
ゴーシュは壁の方へ向いてぼろぼろなみだをこぼし、そしてみんながいなくなった練習場で、静かに練習を続けました。

ゴーシュはその晩、セロを持って家に帰ってきました。
そして水をごくごくとのみ、椅子に座ると、虎みたいな勢いでまた練習を始めました。
なんべんもなんべんもごうごうごうごう弾きつづけました。

なんべんもなんべんもごうごうがあがあと鳴っている音のイメージ

夜中をとうに過ぎてもゴーシュは弾き続けます。
そのとき、誰かがうしろの扉をとんとんと叩きました。

扉から入って来たのは、大きな三毛猫です。
「ああくたびれた。これおみやげです」
「それはおれの畑のトマトじゃないか!」

部屋にやってきた三毛猫

猫はゴーシュの畑から持ってきた、まだ半分青いトマトをゴーシュの前に置きました。
「先生、そうお怒りになったらからだにさわりますよ。そんなことより、シューマンのトロメライをひいてください。きいてあげますよ。どうも先生の音楽をきかないとねむれないんです」
「生意気だ。生意気だ」

ゴーシュは耳にハンカチを詰めると、嵐のような勢いで「印度インド虎狩とらがり」という曲を弾き始めました。
猫がそれを聞くと、猫の眼や額、ひげや鼻からパチパチ火花が出てきました。ゴーシュは面白くなってきました。

印度の虎狩で苦しむ猫

「先生もうたくさんです。やめてください。これからもう先生のタクトなんかとりません」
猫ははねあがって、しまいには風車のようにぐるぐるゴーシュをまわります。
それを見ているとゴーシュもぐるぐるしてきたので、「これで許してやる」といいながら演奏をやめました。そして猫に言いました。
「具合は悪くないかい。舌を出してごらん」
猫が舌を出すと、ゴーシュはいきなりその舌でマッチをすって火をおこし、じぶんのタバコに火をつけました。猫は驚いてあちこちにぶつかり、そしてゴーシュが扉をあけると、走って逃げていきました。
「もう来るなよ。ばか」ゴーシュはその晩ぐっすりとねむりました。

次の晩も水をごくごくとのむと、ゴーシュはごうごうとセロの練習を始めました。
そのまま夜中を過ぎたころ、こっこっと屋根裏を叩くものがあります。かっこうです。

部屋にやってきたかっこう

「先生、私はドレミファを正確にやりたいんです。教えてください」
「今夜は鳥か。うるさいなあ。ちょっとだけ弾いてやるからすんだら帰るんだぞ」
ゴーシュがかっこうかっこうとつづけてひくと、かっこうはたいへん喜んで、途中からかっこうかっこうかっこうとついて叫びました。それはもう一生けん命、いつまでも続けました。

かっこうかっこうと延々と歌うかっこう

ゴーシュは続けているうちに、なんだかふっと自分のドレミファよりもかっこうの方がほんとうのドレミファのような気がしてきました。弾けば弾くほどかっこうの方がいいような気がします。
「えいこんなばかなことをしていたらおれは鳥になってしまう」
ゴーシュはいきなり弾くのをやめました。
「かっかっかっ」いきなり演奏が止まったのでかっこうはふらふらしてゴーシュを恨めしそうに見ます。
「なぜやめたんですか。ぼくらかっこうはのどから血が出るまでは叫ぶんです」
「こんなばかなまねをいつまでもしていられるか。黙れ。朝飯に食ってしまうぞ」

ひっくり返ったかっこう

かっこうは驚いて窓に向かって飛び、ガラスに頭をぶつけて落ちました。くちばしのつけねからすこし血がでています。
また窓ガラスに向かって飛んでいったので、ゴーシュは思わず足を上げて窓をけりました。
ガラスが砕け、かっこうは矢のように外に飛び出しました。
ゴーシュはそのまま倒れるように、へやのすみにころがって眠りました。

次の晩に同じようにセロを練習していると、夜中すぎにまた扉をこつこつ叩くものがあります。
「父さんに言われたんです。僕の小太鼓とセロを合わせてください」
一匹の狸の子が入ってきました。

部屋にやってきた狸の子

ゴーシュは今日は誰がきてもすぐに追い返すつもりだったのですが、狸の子のぼんやりとした顔に負けました。
「どこにも小太鼓がないじゃないか」
「これ」狸の子はせなかから棒きれを二本出しました。
「この『愉快な馬車屋』を弾いてください」
「ジャズか。変な曲だなぁ。よし弾くぞ」
ゴーシュが弾くと、狸の子は棒でセロの駒の下のところをぽんぽん叩きます。
それがなかなかうまいので、ゴーシュはこれは面白いぞと思いました。

ゴーシュと狸の子のセッション

おしまいまで弾くと狸の子はしばらく考え、やっと考え付いたように言いました。
「ゴーシュさんが二番目の糸をひくと遅れるねえ。ぼくがつまずきそうになる」
ゴーシュははっとしました。たしかにそんな気がしていました。
「そうかもしれない。このセロは悪いんだ」
「どこが悪いんだろう。もう一ぺん弾いてくれますか」
もう一度弾き終わったころ、東の空が明るくなっていました。
狸の子は大慌てで帰って行きました。ゴーシュも急いでねどこへもぐり込みました。

次の晩もゴーシュは夜通しセロを弾いてうとうとしていると、明け方近くに扉をこつこつ叩くものがあります。それは小さなこどもをつれた野ねずみでした。

部屋にやってきた野ネズミのお母さん

「先生、この児は具合が悪くて死にそうです。なおしてやってください」
「おれに医者などやれるもんか」
ゴーシュがすこしむっとして言うと、お母さんが言います。
「床下に入って先生のごうごうという音を聞くと、からだの血のめぐりがよくなって病気が治るんです」
「セロの音があんまの代わりになっておまえたちの病気がなおるというのか。それならやってやろう」

ゴーシュはいきなりねずみのこどもをつまんで、セロにあいていた孔から中に入れてしまいました。
そして何とかラプソディをごうごうがあがあ弾きました。

少し弾いて、孔のところに手をあてて待ちます。するとこどものねずみが中からでてきました。

セロの孔でぐったりしている野ねずみ
(本当はこの場面は一匹なのですが、そういう画像が見つからなかったので二匹です。すみません…)

お母さんが心配そうに声をかけても、子どもはぶるぶるぶるぶるふるえたままです。
けれど、急に起き上がって、そして走り出しました。
「ああよくなったんだ。ありがとうございます」
ゴーシュは野ネズミがかわいそうになり、パンをあげました。お母さんはさらに泣いたり笑ったりおじきをしたりして帰って行きました。
ゴーシュはぐうぐうねむりました。

音楽会の様子

それから六日経ちました。音楽会は大成功です。演奏はうまくいきました。

ホールではまだ拍手がなり止みません。
楽長がゴーシュにアンコールにでるように促します。
そして楽団のみんなに舞台に押し出されてしまいました。

一人舞台に立つゴーシュ

「どこまでひとをばかにするんだ。よし見ていろ。印度インド虎狩とらがりをひいてやる」
ゴーシュはすっかり落ち着いていました。
それからあの晩の猫を思い出し、怒った象のような勢いで虎狩を弾きました。
聴衆はしんとなって一生けん命聞いています。

印度の虎狩を弾くゴーシュ

曲が終わって楽屋に逃げ込むと、楽屋では楽長はじめ仲間たちがじっとしてひっそりすわり込んでいます。
ゴーシュはやぶれかぶれと思ってみんなの間をあるいて、長椅子に足を組んでどっかりすわりました。

楽長がいいました。
「ゴーシュ君、よかったぞお。一週間か十日の間にずいぶん仕上げたなあ。やろうと思えばいつでもやれたんじゃないか、君」

その晩遅くにゴーシュは家で、かっこうの飛んでいったそらを眺めて言いました。
「ああかっこう。あのときはすまなかったなあ。おれは怒ったんじゃなかったんだ」

- 宮沢賢治『セロ弾きのゴーシュ』 完 -

『セロ弾きのゴーシュ』は、耳から読書する方法もあります

「宮沢賢治名作選集①にて「どんぐりと山ねこ」を担当した声優・石田彰が、今作「セロひきのゴーシュ」では多彩な声色を巧みに使い、時にはコミカルに、時にはじっくりと聞かせます。声によって創り出される新たな名作の世界観を、是非あなたの耳で感じてください。」
(宮沢賢治名作選集②「セロ弾きのゴーシュ」 Audible版 内容紹介より)

まとめ

いかがでしたでしょうか。
意外とゴーシュが乱暴なことに驚きます。ただ、それはゴーシュらしさでもあるかなと思います。
こちらではなぜ最後にかっこうには謝って猫には謝らないのかを考察しています。

宮沢賢治『セロ弾きのゴーシュ』解説・考察|猫になぜ謝らない?最後のセリフの理由

『セロ弾きのゴーシュ』を全文読みたいと思ったかたはこちら!

また、『セロ弾きのゴーシュ』は絵本にもなっています。

賢治の世界は絵本で見るのも楽しいです。

ここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は宮沢賢治の『セロ弾きのゴーシュ』のあらすじをご紹介しました。
こちらでは同じ宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』『どんぐりと山猫』のあらすじを紹介しているので、良かったらご覧ください。

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